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妊娠中にホルモンバランスを整える方法とは?妊娠中は情緒が不安定になる!

妊娠中はホルモンバランスが普段とは大きく異なるため、情緒が不安定になるなど、さまざまな症状が現れることがあります。

この記事では、妊娠中のホルモンバランスの変化やそれによる症状と、日常生活で心がけたいことを詳しく解説します。

妊娠中のホルモンバランスはどのように変化するのか

妊娠すると、女性のホルモン分泌は大きく変わります。

まず、妊娠した時にだけつくられるホルモンに 「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」があります。これは胎盤の組織から産生されるホルモンなので、胎盤がなければホルモンも存在しないということです。妊娠5~6週頃から一気に分泌が増加し、8~10週頃が分泌のピークとなります。なお、妊娠検査薬はhCGの有無で陰性・陽性の判断をしています。

続いて、hCGと交代するように分泌が増えるのが、「ヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)」です。赤ちゃんとお母さんに栄養を届けるために存在するため、出産直前に分泌がピークとなります。

そして、妊娠中は、普段から体内に存在している女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌にも大きな変化があります。hCGはこれらの女性ホルモンの分泌を促進する役割があるのです。普段も生理周期とともに女性ホルモンの分泌量は変化していますが、妊娠時はその比ではなく、普段とは比べ物にならないくらいの分泌量となります。

妊娠中のホルモンバランスの乱れによる症状は?

妊娠中は、普段は分泌されないホルモンが分泌されるようになったり、女性ホルモンの分泌量が大幅に増えることで、体にも不調や変化が現れます。

代表的なものがつわりです。つわりの中でも特に嗅覚の変化は、hCGの増加が原因だとされています。さらに、エストロゲンの増加は吐き気や嘔吐、プロゲステロンの増加は腸に影響を及ぼし、便秘、お腹の張りなどにつながるほか、強い眠気が出ることもあります。さらに、両者の増加は肌トラブルや、胸の張りや痛みの原因となることもあります。

また、ホルモンバランスが大きく変化することで、イライラや落ち込みなど、情緒が不安定になることもあります。

なお、注意したいことのひとつに甲状腺ホルモンによるトラブルがあります。hCGがたくさん分泌されると、甲状腺ホルモンの分泌が促進されます。一方で、普段甲状腺ホルモンの分泌に関わっている甲状腺刺激ホルモンは低下するため、甲状腺ホルモンのバランスが乱れるケースがあるのです。甲状腺ホルモンの分泌が過剰になると、動悸や頻脈、イライラ、疲れやすさ、手の震えなどの症状が現れることがあり、逆に分泌が少なすぎると、声のかすれ、話し方がゆっくりになる、元気がなくなる、目や顔のはれぼったさといった症状が現れることがあります。

妊娠中にイライラするのはホルモンバランスの乱れが原因かも

妊娠中に、イライラなどの気分の変化を経験する女性は多いでしょう。前述の通り、これはホルモンバランスの変化によるものだと考えられています。その具体的なメカニズムは、以下の通りです。

交感神経が優位になり、気分が変化しやすくなる

妊娠中はエストロゲンやプロゲステロンの分泌が激増し、女性ホルモンのバランスは大きく変化します。女性ホルモンのバランスが変化すると、自律神経に影響が出ることがあります。自律神経は交感神経と副交感神経がバランスをとることで心身共に健康でいられるのですが、妊娠中は交感神経が優位になりやすく、イライラするといった気分の変化が起こりやすいのです。

プロゲステロンの変動が感情のコントロールを困難に

女性ホルモンのうち、特にプロゲステロンは気分の変化を起こしやすいホルモンです。自律神経の調整をする視床下部に影響を及ぼし、感情のコントロールを困難にしてしまうことがあるのです。これも、妊娠中のイライラの原因だと考えられます。

妊娠中のホルモンバランスを整える方法とは?

妊娠を維持するために、ホルモンバランスが普段と異なることは当然ですが、可能な範囲でホルモンバランスを整え、つらい症状が出ないようにしたいもの。心身共に穏やかに過ごすために、以下のようなことを心がけましょう。

疲れ過ぎない程度に運動する

運動は、ホルモンバランスの影響によるメンタルの不調を改善する効果が期待できます。また、筋力低下予防や、体重管理にもつながるため、妊娠中でも適度な運動を心がけましょう。

激しい運動は控えたほうがよいので、ウォーキング、ヨガ、スイミングなどのマタニティエクササイズなどを取り入れてみてはいかがでしょうか。

また、基本的に、妊娠中でも運動してはいけない時期といったものはありません。ただ、体調や医師と相談しながら、適切な内容、頻度で運動に取り組むとよいでしょう。

規則正しい生活を送る

規則正しい生活を送ることもとても重要。特に、朝起きたら朝日を浴びることを心がけましょう。自律神経が整いやすくなり、イライラなどの症状緩和に効果が期待できます。

睡眠時間を十分に確保する

ホルモンバランスの変化は、睡眠にも大きな影響を及ぼします。妊娠中はプロゲステロンによって日中に眠くなることが多く、後期になると、体の変化によって眠りにくくなり、睡眠中に起きてしまうことが増えます。

しかし、ホルモンバランスや自律神経のバランスを整えるには、しっかり睡眠をとることが不可欠。夜12時までには眠りにつき、6~7時間以上の睡眠を確保しましょう
なお、日中の眠気が強い場合、15時よりも前であれば短時間昼寝をしても構いません

栄養バランスを意識して食事をする

ホルモンバランスを整えるためには、栄養バランスのとれた食生活を心がけることが大事です。さまざまな種類の食材を取り入れましょう。また、無理なダイエットはせず、適正体重を維持するようにしてください。

なお、妊娠中期には胎盤が完成して、お母さんがとった栄養が赤ちゃんに届くようになります。そのため、中期以降は特に鉄分やタンパク質、カルシウムなどを含んだ栄養あるバランスの取れた食事を心がけるようにしましょう。

どうしても情緒が不安定であったり、イライラする場合は担当医に相談も検討

妊娠中はホルモンの状態が普段とは大きく異なります。それによって、イライラなどの精神的な症状が現れることも。家族や周囲の言動でピリピリする場合や、よかれと思って言ってくれた言葉を素直に受け取れないことも、時としてあるかもしれません。

まずは生活習慣を整え、適度な運動、規則正しい生活、十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。どうしても情緒が不安定になったり、イライラしてつらかったりする場合は、担当医や助産師さんに相談してみてください。

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この記事の監修者

浅井 貴子

・助産師

・新生児訪問指導歴は25年以上

・各情報サイトやランキングサイトなどでも執筆多数