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「つわり」との向き合い方

妊娠初期の妊婦さんにとって、不安になるものの一つがつわりではないでしょうか。
つわりとは、妊娠初期に起こる吐き気や嘔吐、食欲不振などのことを言います。つわりをきっかけに妊娠に気づいたという方もいるでしょう。

そんなつわりですが、症状や時期は人それぞれ。つわりで辛い思いをしたという妊婦さんがいる一方、つわりを全く感じなかったという妊婦さんもいるのです。
個人差も大きいことから、「この症状はつわりなの?」「つわりってこんなに辛いの?」と周りの妊婦さんと違っていると不安を感じることもあると思います。

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この記事では、つわりの原因や症状を正しく理解し、つらい症状を和らげる工夫や過ごし方についてご紹介します。

1. つわりについて知る

つわりはいつからいつまで?

つわりは、一般的には妊娠5~6週頃から始まり、15週ごろには症状が落ち着くと言われています。
しかし、その時期も個人差があります。月経の遅れを感じた頃につわりが始まったり、妊娠中ずっとつわりみたいな症状が続いたというケースも少なくありません。

個人差の大きいつわり

個人差が大きいつわりですが、人によって異なるのは期間の長さだけではありません。症状もその重さも人それぞれなのです。また、つわりは安定期前に起きることが多く、なかなか人に相談できず精神的にも辛い妊婦さんも多いのではないでしょうか。

そんな妊婦さんのために、代表的なつわりの症状から「これってつわりなの?」と思ってしまうような症状までご紹介します。

つわりってどんな症状があるの?

・吐きづわり
つわりの代表的な症状で、吐いてしまってご飯を食べられない状態です。食事をとると吐いてしまうというのが主な症状ですが、食後に限らず、常に吐き気があり吐いてしまうという場合もあります。

・食べづわり
吐きづわりの中でも特に、空腹時に気持ち悪くなってしまうものを「食べづわり」といいます。食べると吐いてしまう吐きづわりと違い、食べていないと気持ち悪くなる状態です。

・匂いづわり
特定の匂いをかぐと気分が悪くなってしまう匂いづわり。吐きづわりと同時に起きてしまうことも少なくありません。一般的な異臭、汚臭と呼ばれるものだけではなく、炊けたご飯の匂いや、お気に入りの柔軟剤の匂いにも敏感になってしまうケースもあります。

代表的なつわりの症状は以上の3つですが、実際に妊娠初期に起こるつわりといわれる症状はもっと多く存在します。
例えば、昼間眠くなってしまう、生理痛のようにおなかが張ったりする症状や眠くなる、だるさを感じやすくなるなど「これってつわりだったの?」と思ってしまうような症状もあるのです。

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症状も、つらさも人それぞれあるつわりですが、そもそもどうして起こるのでしょうか。
つわりの原因について、専門家の方に聞いてみました。

つわりはなぜ起こるの?

つわりは50%~80%の妊婦さんが経験すると言われていますが、つわりが起こる原因は、実は明らかになっていないのです。
妊娠すると胎盤の絨毛から分泌されるホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が嘔吐中枢などを刺激するという説が有力視されているものの、あくまで説の一つ。他にもホルモンバランスの変化による自律神経の失調や、母体が精子の侵入や胎児を異物と判断してしまうことによるアレルギー反応という説もあります。

また、個人差だけでなく同じ妊婦さんでも一人目の妊娠、二人目の妊娠で症状が変わることもあります。一人目ではつわりが辛かったのに、二人目のつわりは症状が軽い、という人もいれば、その逆のケースもあります。
このことから環境やストレスなどでもつわりの症状が変わってくることがあるのです。

2. つわりについての誤解

つわりと赤ちゃんの成長の関係性

つわりが辛くても、「赤ちゃんの成長や発育のために食事をしっかり摂らないと」と焦りや不安を感じてしまいますよね。
しかし、実は一般的につわりが起きやすいと言われる妊娠初期の赤ちゃんはとても小さく、必要な栄養の量もとても少ないのです。

また、妊娠中のお母さんの体は、赤ちゃんにとって必要な栄養を優先的に赤ちゃんに届けるような仕組みになっています。赤ちゃんに必要な最低限のビタミンの摂取は必要ですが、赤ちゃんの成長や発育に大きな影響はないので、無理をせずに食べられるものを食べましょう。

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つわりは我慢するもの?

つわりは、我慢しすぎる必要はありません。重症になると、お母さんだけでなく赤ちゃんにも悪い影響が出てくる場合もあります。体重が妊娠前の5%以上減ってしまったときや水分さえ取れないとき、めまいや吐き気によって日常生活が送れないようなときには受診が必要です。
このような症状が続くときは、無理をせずにゆっくりと過ごしましょう。
それでも辛いときには我慢せずにすぐに病院へ相談しましょう。

3. 産婦人科医の先生から妊婦さんへ つらいつわり期の乗り越え方

辛いつわりの期間で大切なことは「無理をしないこと」です。辛くなったら横になる、食べられるものを食べる、などできるだけストレスを溜め込まないようリラックスして過ごしましょう。

ここ10年で、生活様式が変わり、妊娠しても働き続けるお母さんたちが増えてきました。つわりで体調が悪い時に、大事な仕事があるから・・・と無理をするのは非常にキケンです。無理をしないこと、リラックスすることを優先し、つわり期を乗り越えましょう。

また、実はつわりって波があるんです。つわり期の中でも調子が良い日やつわりが重く体調が悪い日もあります。
調子がいい日にはご飯を食べたり、少し運動をしてみたりして過ごしましょう。
一方で体調が悪い日には、今日は調子が悪い日だと受け止め無理をせず過ごしましょう。

つわりは必ず終わりが来ます。体調の変化にゆだねて、ゆっくりのんびりと過ごしていきましょう。

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監修:産婦人科医 宗田聡先生

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筑波大学卒業後、同大学へ産婦人科医師として勤務。その後、海外の大学への派遣や、周産期センター長を経て、現在は医療法人HiROO理事長・広尾レディース~恵比寿本院~の院長を務める。「誰にでもいいお産を味わってもらいたい」という思いで、妊婦さんや出産をはじめ女性医療と真摯に向き合っている。