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妊娠中の免疫力低下はなぜ起こる?妊娠中の免疫力を上げる方法もご紹介

妊婦さんは体の様々な変化によって体調不良も起こりやすい状態ですが、なかでも注意すべきことに、免疫力の低下があります。

妊婦さんは、通常であれば感染しても大事には至らないような感染症が重症化したり、普段は摂取しても問題ない菌やウイルスなどに感染しやすくなり、食中毒を引き起こしたりすることがあります。

この記事では、妊婦さんの免疫力が下がる理由や、免疫力を高めるコツなどを説明します。

妊娠中の免疫力低下はなぜ起こるのか?

「妊婦さんは免疫力が下がる」と聞いたことがあるかもしれませんが、それはなぜなのでしょうか。代表的な理由としては、おなかの赤ちゃんを守るため、ストレスやホルモンバランスの乱れによるもの、といったものが挙げられます。以下で詳しく解説します。

おなかの赤ちゃんを守るため

妊婦さんの免疫力が下がる大きな理由として、おなかの赤ちゃんを守ることが挙げられます。

赤ちゃんはお母さんとは異なる遺伝子を持っており、本来、体にとっては異物だといえます。しかし、妊娠中は体が赤ちゃんを異物だとみなして拒絶することがないように、免疫力が下がると考えられています。

ストレスやホルモンバランスの乱れが起こるため

妊娠中は、ホルモンバランスが変化したり、肉体的、精神的なさまざまな変化によってストレスを感じやすかったり、運動不足や栄養不足になったりと、普段とは体も環境も大きく異なります

こういった変化も、免疫力が下がる原因となります。

妊娠中の免疫力を上げる方法

妊婦さんの免疫力が下がってしまうのは仕方がないことではありますが、できれば可能な限り免疫力を高めたいもの。免疫力を上げるためには、適度な運動、適切な食事、十分な睡眠、規則正しい生活などを心がけることが大事です。詳しく見ていきましょう。

適度な運動を行う

適度な運動によって血行が良くなると免疫力が上がるとされています。運動は、免疫力低下の原因となるストレス解消にもよいので一石二鳥。

ただし、過剰な運動をすると体にストレスがかかり、免疫力低下につながることも。特に妊娠中の過剰な運動は、母体にとっても赤ちゃんにとっても負担になり、逆効果になることがあるため注意しましょう。

運動をしたい場合は、時期や内容などについて主治医に相談することが大切です。マタニティの運動で代表的なものには、マタニティヨガ、マタニティスイミングなどがあります。

発酵食品・食物繊維を積極的にとる

免疫力を高めるためには腸内環境を整えることが大切。これは、免疫細胞の大半が腸内に存在するためです。

妊婦さんの腸内環境を整え、免疫力アップにつながるおすすめの食べ物は、発酵食品(乳酸菌を多く含む)と食物繊維を多く含む食べ物。具体的には以下の通りです。

栄養素・成分 はたらき・特徴 多く含まれる食材
植物性乳酸菌 ・腸内の善玉菌を増やす ・腸内細菌のバランスを整える ・分解されにくく、腸まで届きやすい ・キムチ ・ぬか漬け ・みそ ・しょうゆ  など
動物性乳酸菌 ・胃酸によって分解され、植物性乳酸菌や腸内細菌の働きをサポートする ・牛乳 ・チーズ ・ヨーグルト  など
水溶性食物繊維 ・腸内細菌を増やす ・海藻類(昆布、わかめなど ・くだもの  など
不溶性食物繊維 ・腸内細菌を増やす ・便通をよくする ・野菜 ・豆類 ・きのこ類  など

なお、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は1:2の割合がよいと言われています。また、発酵食品や食物繊維だけをとるのではなく、栄養バランスのとれた食事を心がけることが大切です。まずは主食、主菜、副菜をそろえることを意識してみましょう。

しっかり睡眠をとる

睡眠も、免疫力アップによいとされています。妊娠中はお腹が大きくなったり、さまざまな不調やマイナートラブルの影響で、ぐっすり眠れないということも多いでしょう。

長時間睡眠がとれないような場合は、睡眠の質にこだわるのも一つの方法。以下のような点を心がけましょう。

方法・注意点 理由・補足
入浴 38~40℃のぬるめのお湯に入る 温度が高すぎると交感神経が刺激され、興奮状態になるため
寝る1時間半ほど前に、10分程度入浴する ・体温が上がった後、体温が下がるときに入眠しやすくなるため ・長湯は体の負担になる
運動 日中に軽い運動をする ・睡眠の質改善につながるため ・特にヨガはストレスを軽減し、睡眠の質を高める
スマホ・パソコン・テレビなど 寝る前に見ない ブルーライトが睡眠を促すホルモンの分泌を抑えてしまうため

規則正しい生活を送る

規則正しい生活を送ることも大事です。朝は決まった時間に起きて、朝日を浴びましょう早寝、早起きを心がけ、朝ごはんをしっかり食べるのがポイントです。

妊娠中の免疫力低下による感染症を予防する方法

妊婦さんは免疫力が下がりがちなため、感染症にかかりやすく、重症化しやすい状態です。なかには赤ちゃんに大きな影響を与えてしまう感染症もあるため、予防を徹底する必要があります。

日ごろから取り組みやすい方法としては、手洗い、十分な休息、人ごみを避けることなどが挙げられます。詳しく見ていきましょう。

手洗いを心がける

感染症予防の基本は手洗いです。外から帰ってきたらしっかり手洗いをしましょう。たとえばトキソプラズマはネコ科の動物の糞にも含まれているため、土を触った後に手を洗うのも必須です。

また、子供から感染しやすい感染症もあるので、すでに子供がいる方は、子供の尿や唾液が手についたときや、おむつ替えのあとにも手を洗いましょう

さらに、妊娠中は食中毒のリスクも高まるため、食事の前の手洗いも重要です。

しっかり休息をとるようにする

妊婦さんは体調を崩しやすい状態なので、しっかり休息をとりましょう。8時間程度の睡眠を心がけ、日中も1日数回程度、楽な姿勢になって横になるなど休息してください。また、家事は楽な姿勢で行ったり、ストレスをためないようにしたりするなど、おだやかに過ごせるようにしましょう。

できるだけ人ごみを避ける

人から人に感染する病気を避けるために、できるだけ人ごみを避けましょう。人ごみに近づいた場合は、必ず手洗いや消毒をすることも大事です。

また、妊娠初期に特に気を付けるべき感染症に風しんがありますが、風しんの抗体がなくても、妊娠中にワクチン接種を受けることはできません。そのため、風しんが発生しているという情報が出ているときは特に、その地域ではできるだけ外出を控え、人ごみに近づかないことが重要です。

妊娠中の免疫力アップには運動・食事・睡眠が重要

妊婦さんは、赤ちゃんを守るため、また、ストレスやホルモンバランスの乱れのために免疫力が下がりがちです。

少しでも免疫力を高めるためには、適度な運動や、腸内環境を整える食事、十分な睡眠などが重要です。

また、感染症などを予防するために、手洗いをこころがけ、しっかり休息をとる、できるだけ人ごみを避けるといった対策も行いましょう。

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この記事の監修者

浅井 貴子

・助産師

・新生児訪問指導歴は25年以上

・各情報サイトやランキングサイトなどでも執筆多数