産後はさまざまな理由でカルシウムが不足しやすく、過度に不足すると骨密度が低下したり(骨折したり)イライラしたりする原因となります。
この記事では、産後にカルシウムが不足する原因とそのリスク、カルシウムを多く含む食べ物などについて詳しく解説します。
産後はカルシウムが不足する?その原因とは
産後、お母さんの体はカルシウム不足になりやすいと言われています。その原因としてようなものが挙げられます。
- 妊娠中に赤ちゃんの発育でたくさん消費した
- ホルモンの変化
- 産後の授乳
- 産後の栄養不足
詳しく見ていきましょう。
妊娠中に赤ちゃんの発育でたくさん消費した
妊娠中は、酸素や栄養素を胎盤を通じて赤ちゃんに送ります。妊娠中は赤ちゃんの骨の形成のためにカルシウムが必要なので、お母さんの体内にあるカルシウムも赤ちゃんに送られていました。そのため、産後も授乳などでこの影響が続いていることがあります。
ただし、妊娠中は普段よりもお母さんのカルシウム吸収率が上がっているため、カルシウムをしっかり摂れていれば、過度に不足することはないと言われています。
ホルモンの変化
妊娠中は、妊娠継続のために女性ホルモンの分泌量が激増します。しかし、出産すると女性ホルモンの分泌はほぼゼロになるまで激減します。
女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」には、骨にカルシウムをためる働きがあるため、エストロゲンの分泌が減ることで体内のカルシウムも不足しやすくなります。
産後の授乳でカルシウムが消費される!
産後は、母乳を通して赤ちゃんにカルシウムなどの栄養素を送る必要があります。赤ちゃんは、お腹にいるときよりも生まれた後のほうがたくさんのカルシウムを必要とするため、お母さんは妊娠中以上にカルシウムが不足しやすくなります。
また、前述の通り、エストロゲンの減少によって骨にカルシウムがたまりにくくなり、お母さんの骨からカルシウムが溶けて母乳に移行してしまいます。このように、授乳によってさまざまな角度からカルシウムが不足してしまうのです。
産後の栄養不足
産後は育児に忙しく、満足に食事をとる時間がないお母さんが多いでしょう。簡単に食べられるものでいいやと、菓子パンなどで済ませている方もいるかもしれません。
しかし、ここまでで解説した通り、お母さんの体の状態と、赤ちゃんが母乳から栄養を欲していることなどによって、産後はカルシウムが不足しやすくなっています。その上、お母さんの食事が十分でないと、さらにカルシウム不足となってしまいます。
産後にカルシウムが不足するリスク
産後はカルシウムが不足しやすく、過度に不足すると「妊娠後骨粗鬆症」になることがあります。骨粗鬆症は高齢者に多い病気ですが、妊娠後期から産後半年くらいの間に一時的に骨粗鬆症になる方もいるのです。
知らず知らずのうちに背骨が圧迫骨折し、痛みが生じることもあるため、産後に腰や背中が痛い場合は注意が必要です。
なお、授乳が終わり、生理が再開すると骨密度も回復することが一般的ですが、骨折が起きてしまうと背骨が変形するなどの後遺症が残ることがあるため、気になる症状があれば早めに受診することが大事です。
また、カルシウムには神経の興奮を抑える働きが期待できるため、不足するとイライラしやすくなることもあります。
産後のカルシウムの必要量は?
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、15~74歳の女性のカルシウム摂取の推奨量は、1日あたり650mgとなっています。
これは妊娠中でも授乳中でも変わらないため、妊娠中・授乳中にかかわらず、普段からカルシウムをしっかり摂取する必要があります。
カルシウムを多く含む食べ物とは?
産後のカルシウム不足を防ぐには、積極的にカルシウムを摂取することが大事。また、妊娠前に骨密度が不十分だと、骨粗鬆症による骨折のリスクが高まるとも言われているため、産前からカルシウムを摂る習慣をつけましょう。
カルシウムを多く含む食べ物には、以下のようなものがあります。
食べ物 | 100gあたりの含有量 |
干しエビ | 7100mg |
青汁(ケール) | 1200mg |
ごま | 1200mg |
チーズ(エメンタールチーズ) | 1200mg |
かたくちいわしのみりん干し | 800mg |
チーズ(チェダーチーズ) | 740mg |
チーズ(ゴーダチーズ) | 680mg |
チーズ(プロセスチーズ) | 630mg |
牛乳 | 110mg |
サプリメントの利用を検討してみて!
カルシウムは吸収されにくい栄養素なので、前項で紹介した食べ物を食べても、カルシウムが全て吸収されるわけではありません。たとえば牛乳の場合、体内に吸収されるカルシウムの量は4割程度と言われており、魚介類の吸収率はさらに下がると言われています。
そのため、効率よくたくさんのカルシウムを摂取するためにサプリメントの利用を検討することをおすすめします。
カルシウムと一緒に摂りたい栄養素は?
産後にカルシウムが必要だからと言って、カルシウムだけを摂るのはNG。さまざまな栄養素をバランスよく摂ることと、カルシウムの吸収率を上げるような栄養素を積極的に摂ることを意識しましょう。
カルシウムの吸収率を上げる栄養素と食べ物には、以下のようなものがあります。
- ビタミンC:アセロラ、キウイフルーツ、レモン、ピーマン、青汁、のりなど
- ビタミンD:いわし、すじこ、あんこうの肝、塩辛、かつおなど
- マグネシウム:のり、海藻系など
- リン:煮干し、するめ、干しエビなど
また、骨に負荷をかけないとカルシウムの利用効率が悪くなるため、適度に運動することも大切です。
産後に必要なその他の栄養素は?
産後は母体の回復や授乳のためにさまざまな栄養素が必要となります。特に母乳育児をする場合は、自分と赤ちゃん2人分の栄養が必要となるため、しっかり栄養を摂りましょう。タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが大事です。
産後に特に必要な栄養素と働きは以下の通りです。
栄養素 | 働き、効果など | 多く含まれる食べ物 |
鉄分 | ・ヘモグロビンをつくる ・産後の出血による鉄分不足を補う ・貧血予防 | ・レバー ・いわし ・ほうれんそう など |
亜鉛 | ・赤血球をつくる ・細胞分裂に必要 ・子宮の回復を促進 ・貧血予防 | ・レバー ・枝豆 ・ブロッコリー など |
葉酸 | ・細胞分裂、タンパク質の代謝に必要 ・母体回復に必要 ・赤ちゃんの成長に必要 | ・豚レバー ・牛ヒレ、牛肩ロース、牛ひき肉 ・卵 ・たらこ など |
また、エストロゲンの減少によってカルシウム不足につながると説明しましたが、エストロゲンを補うためには大豆イソフラボンやエクオールがおすすめ。いずれも女性ホルモンに似た働きをするものです。大豆イソフラボンは豆腐などの大豆製品に含まれていますが、エクオール自体は食べ物から摂取することはできないので、エクオール含有のサプリを活用しましょう。
産後はツバメの巣もおすすめ!
中国などでは、ツバメの巣は産前産後の養生に欠かせない食材とされており、8割以上の妊婦さんがツバメの巣を取り入れていると言われています。
ツバメの巣には、水溶性タンパク質、複数種類のアミノ酸、繊維質、炭水化物、カルシウム、ビタミン、カリウム、リン、ヨウ素など、さまざまな栄養素が含まれています。さらに、美肌、育毛、免疫力アップなど、美容や健康にもよいとされています。
ツバメの巣の成分を配合したサプリメントやゼリーもあるので、取り入れてみてはいかがでしょうか。
産後はカルシウムを積極的に摂ろう!
妊娠中~産後は、ホルモンの変化や、赤ちゃんに栄養が移行するといった理由でカルシウムが不足しがちです。
カルシウムが不足すると骨粗鬆症やイライラの原因にもなるため、積極的にカルシウムを摂りましょう。カルシウムが多く含まれる食べ物には、干しエビや青汁(ケール)、牛乳などがあります。カルシウムの吸収率を上げるために、ビタミンC、D、マグネシウム、リンなども積極的に摂ることが大事です。
サプリなども活用しながら産後の栄養不足を予防しましょう。