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無痛分娩の産後の回復は早い?痛みや産後うつなど、考えられる産後リスクについて解説

麻酔を使うことで出産の痛みを軽減できる無痛分娩。では、産後の回復については自然分娩との違いがあるのでしょうか?本記事では、無痛分娩の産後の回復について解説します。

無痛分娩の産後の回復について

出産の状況や体質などが人それぞれ異なるため一概にはいえませんが、無痛分娩の産後の回復には、以下のような特徴があります。

  • 体力回復が早い
  • 痛みはあるものの、痛みケアが充実している場合が多い
  • 産後うつが少ない傾向にある

それぞれの特徴について、下記にてくわしく解説します。

無痛分娩の産後の体力回復は早い

無痛分娩は自然分娩と比べて、産後の体力回復が比較的早いといわれています。無痛分娩といっても、自然分娩と同じく赤ちゃんは産道を通って出てきますし、会陰切開などを行うこともあるので、体にダメージが残ることは避けられません。

しかし麻酔が効いているので、出産時や会陰切開・縫合時の強い痛みを我慢する必要がなく、リラックスして出産に臨めます

ただし、無痛分娩は、麻酔の影響で陣痛やいきむ力が弱まり、自然分娩よりも出産に時間がかかる傾向にあるので、吸引分娩や鉗子分娩になる事も多いです。出産に時間がかかると疲労が蓄積するので、体力回復に時間がかかることもあるでしょう。

無痛分娩でも産後の痛みはあるが、痛みケアが充実している場合が多い

無痛分娩という名称ではあるものの、陣痛が始まってから麻酔を注入することもあり、その場合は一切痛みを感じないわけではありません。自然分娩の2~3割程度まで痛みが抑えられるとイメージしておくとよいでしょう。

ただ、最初から麻酔を注入し、完全に痛みを抑えるケースもあります

また、先述のとおり無痛分娩でも体にダメージは残るので、麻酔が切れてから痛みを感じることがあります。出産時の痛みを麻酔で抑えていたために、産後の痛みをより強く感じる方もいるようです。とはいえ、内服薬や座薬を処方したりと痛みケアが充実している場合が多いようです。

無痛分娩の産後うつは少ない傾向にある

無痛分娩は出産に対する満足度が高まりやすく、産後うつが少ない傾向にあるといわれています。痛みを我慢する必要がなく、精神的に余裕が出やすいため、自分の出産が価値あるものだったと肯定的に捉えやすいようです。

ただし、ホルモンバランスの乱れや育児への不安なども産後うつの原因となるため、無痛分娩を選んだからといって、必ずしも産後うつにならないわけではないことは理解しておきましょう。

無痛分娩でも産後のむくみは出ることがある

産後は、出血や羊水の排出などの影響で体内の水分バランスが崩れて、体のむくみが出ることがあります。

無痛分娩でも痛みは軽減できますが、出血や羊水の排出などがなくなるわけではありません。また、横になった状態で点滴を受けるので、体のむくみが出ることもあります。

無痛分娩の体力回復が早い理由は、体力や精神力を温存できるから

出産は体力も精神力も削られるものですが、その原因の多くは「長時間痛みを我慢し続ける」ことによるものです。

麻酔で痛みを軽減する無痛分娩なら、精神的・身体的負担が軽減できるため、よほどお産が長引かない限りは体力・精神力が温存できます

余裕をもって出産したい方は、無痛分娩も選択肢のひとつとして検討してみるとよいでしょう。

無痛分娩で考えられる産後リスク

痛みが少なく、余裕をもって出産に臨める無痛分娩ですが、産後に問題が出ることがあります。無痛分娩の産後リスクについても理解したうえで、無痛分娩を選ぶかどうかを決めましょう。

産後に足の力が入りにくくなる

無痛分娩では背中の神経の一部に麻酔をかけますが、その神経の周辺には、足の感覚や運動を司る神経も存在します。その神経が麻酔の影響を受けると、産後に足の力が入りにくくなることがあります。

といっても、麻酔の影響によるものの場合、数日から数週間で改善することが多いので、あまり心配する必要はないでしょう。

産後に血圧低下が見られる場合がある

無痛分娩で麻酔をかける神経周辺には、血圧を調整する神経もあります。その神経が麻酔の影響を受けて、血圧が低下するケースもあります。

そのため、無痛分娩の際には定期的に血圧測定を行い、血圧が低下したときには輸液や昇圧剤などで速やかに対処が行われます。

産後に尿が出にくくなる場合がある(排尿障害)

無痛分娩では、尿意を感じたり尿を出したりする神経が麻酔の影響を受けて、産後に尿が出にくくなることがあります。

多くの場合、退院までに症状が改善するため、それほど心配する必要はないでしょう。

麻酔の副作用

硬膜外麻酔という医療行為の副作用で吐き気や嘔吐、頭痛、気分不快などが出る人もいます。入院中であれば鎮痛剤や吐き気止めなどを処方してくれますが、稀に麻酔の薬剤が身体に合わない人もいるので、麻酔科医がいる病院での出産が望ましいです。

無痛分娩なら産後の回復が早く、不調も起こりにくい

無痛分娩は自然分娩よりも痛みが少なく、精神的・身体的負担が軽減できるため、産後の回復が早いといわれています。

出産に対する満足度が高まり、産後うつになりにくいという調査結果もあるので、出産の傷みや産後の生活に不安がある方は、無痛分娩を検討してみるのもよいでしょう。

ただし、「無痛」という名称ではあるものの、一切痛みがないわけではありません。麻酔を注入するのは陣痛が始まってからであり、産後に麻酔が切れたあとに、会陰切開などの痛みを感じることもあります。

また、産後にむくみや血圧低下、足の力が入りにくいなどの問題が出ることもあります。いずれも時間が経過すれば改善するケースが多いですが、こうしたリスクも考慮したうえで、無痛分娩にするかどうかを決定しましょう。

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この記事の監修者

浅井 貴子

・助産師

・新生児訪問指導歴は25年以上

・各情報サイトやランキングサイトなどでも執筆多数