産後ケアセンターとは
産後ケアセンターとは、出産後の育児支援を目的とし、母親と赤ちゃんが一緒に過ごせる宿泊型ケア施設のことです。
「産後ケアホテルとは何が違うの?」
産後ケアホテルは、リラックスや緩和に重点を置いた施設ですが、産後ケアセンターは、専門店的な医療スタッフや助産師が在籍しますので、医療サポートやリハビリなど産後の健康管理に重点を置いた施設です。
個室が基本で、リラックスした時間が過ごせるようシステム化されており、夫や子供など家族と一緒に宿泊できるスペースも完備されています。
看護師、助産師を中心に臨床心理士、産後ケアリストなどの専門職が24時間体制で産後ママのケアにあたります。
また、産後ケアセンターでは、産後ママの休養と体力回復に向けてさまざまなケアと癒しのプログラムを提供します。授乳や沐浴の仕方から、骨盤ケア、ヨガ、アロママッサージなど母体の回復を促すケア、さらに育児相談などのカウンセリングや産後の母子にとって心地よい環境づくりなど、いずれも専門家の知識と技術に基づいた質の高いプログラムが用意されています。
産後の女性にとってはまさに養生とリラクゼーションと学びを兼ね備えた快適な滞在となるはずです。
特に産後ママにとってうれしいサポートは、夜間の赤ちゃんのお世話を助産師におまかせし、ぐっすり眠れることでしょう。
寝不足によるイライラや疲れが解消され、女性が落ち着いて体力を回復する時間をつくるお手伝いをします。
産後ケアセンターで過ごす期間は、赤ちゃんとの生活に慣れて、退院後の生活をイメージしていく時間です。毎日おっぱいのマッサージを受けたり、赤ちゃんのお風呂の入れ方を学びながら、母親として少しずつ育児に自信をつけていくことができる大切な準備期間なのです。産後ケアセンターは、産後ママにとって「ゆりかごそのもの」といえるでしょう。
どんな人たちが利用できる?
出産後、身体の回復に時間がかかっている人や産院を退院したものの育児に不安があり、赤ちゃんのお世話についてもっと学びたい人、実家が遠方でサポートが少ない人などの利用が多くみられますが、基本的には産後4カ月以内など条件を満たせばどなたでも利用できます。
(条件は施設・自治体によって異なり、面接がある場合があります。)
なお近年は、核家族化が進んでいるため利用希望者が増えており、なかなか予約がとれない施設もありますので利用を希望する場合は事前に調べておいて予約をすることがオススメです。
産後ケアセンターを利用するメリット
産後ケアセンターは、医療スタッフや専門職が常駐し、医療行為は行わないけれど(医師が常駐しているところでは医療行為も行えます)、産後の身体のケアやおっぱいのケア、育児の練習を一緒に行うための場所です。
施設によっては臨床心理士もいて、産後の心理状態の変化が大きいときにお話を聞いてもらうことで、こころの負担が軽くなることもあります。
また、温かくて栄養バランスのとれた食事を入院中のママたちと一緒に食し(個室対応のところもあります)、育児の大変さを共感できたり、アドバイスをもらったりすることで、おなかもこころも満たされます。
時にはベビー室でスタッフに赤ちゃんを預かってもらって、ゆっくり休息をとることもできます。
産後ケアセンターで、ママの産後の心身を、栄養と休息をとってしっかり回復させておくことと、育児に関して分からないことを解消しておくことで、退院後、自宅での育児がスムーズにスタートできるようになります。
産後、ご家族のサポートが受けられそうにない場合や、育児への不安があるなどの場合は、産後ケアセンターを利用して、ママの身体を休めることやこころを軽くすることも大切です。身体やこころが休めていると子育てが楽しいと思える時間が増えるはず。
産後ケアのサービス形態はおもに3種類
産後ケアに関するサービスのおもな形態は、宿泊型、デイサービス(個別または集団)、アウトリーチ型の3種類です。
- 宿泊型…産後の母子が施設に宿泊しながらサービスを受けます。個室を利用できる施設や長期滞在を受け入れている施設もあります。
- デイサービス型(個別または集団)…施設に6~8時間程度滞在し、個別または集団でサービスを受けます。
- アウトリーチ型…施設のスタッフが母子の自宅などに訪問し、サービスを提供します。
受けられるサービス内容
産後ケア施設では、以下のようなサービスを提供しています。
母体ケア
産後の母親の体調管理・健康チェックを行い、産後の回復に必要な休息がとれるようサポートします。母親が安心して食事や入浴、仮眠ができるように、スタッフに赤ちゃんを一時的に預かってもらうことができます。
また、産褥期(さんじょくき)は母乳に関する悩みもつきものです。「母乳が出にくい」、「乳腺が張りがち」などの母体が抱える身体の悩みに対して、専門のスタッフがアドバイスを提供します。
乳児ケア
生まれたばかりの赤ちゃんのケアも欠かせません。赤ちゃんの健康チェック、体重測定、お昼寝などの生活リズムづくりをサポートします。母乳・ミルクが足りているか、赤ちゃんの吸う力、授乳の姿勢に問題がないかもチェックします。
育児相談・授乳指導・沐浴指導
育児に関する悩みの相談を受け付けます。また、「赤ちゃんへの授乳方法がわからない・ミルクの与え方がわからない」といった疑問や、赤ちゃんの沐浴方法に関する疑問に答え、赤ちゃんとの生活に必要な育児スキルを経験豊かなスタッフが実技指導します。
その他
自宅での育児環境のあり方について、パートナーや家族を含めてのコンサルティングや、施設を利用する母親同士の交流会といった機会を提供します。また施設によっては、臨床心理士による心理相談の機会を設けているところもあります。
※各自治体によって、提供内容は異なります。詳細は住民票のある市区町村の窓口での確認が必要です。
利用条件や料金など
産後ケア施設の利用に関しては、定員に限りがあるため、市区町村によっては利用条件を定めていることがあります。母親本人の希望によって利用申し込みができる場合や、保健師や助産師などの専門家による助言や意見書が必要な場合があります。
産後ケア施設を利用できるのは、原則的に産後の母親とその赤ちゃんに限られますが、施設によっては上の子も一緒に宿泊利用や、デイサービスの利用ができるところもあります。
利用料金は全国一律ではなく、市区町村もしくは施設ごとに定められています。多くは行政からの利用料金の補助が出るしくみで、利用者は利用料金の一部を負担します。住民税の非課税世帯、均等割のみ課税世帯、生活保護世帯には減免制度があり、経済的な不安を抱く世帯も利用しやすいように配慮されています。
※産後ケア施設の利用条件・利用料金・利用料減免制度の詳細に関しては、住民票のある市区町村の窓口での確認が必要です。
※産後ケア施設の利用にかかる費用は、医療費控除の対象になる場合があります。対象になるかどうかについては、所轄の税務署に問い合わせが必要です。
産後の母子が、すこやかな生活をスタートさせるためには、周囲のサポートが欠かせません。とくに母親の体調面、心理面が不安定になりやすい産褥期は、育児に関する小さな悩みや不安を気軽に共有できる環境が必要です。
地域の産後ケア施設は、母親が自信をもって育児に向き合えるよう、母親に正しい情報とセルフケアの知識を伝えられるよう、日々活動しています。