産後の睡眠不足がツライ!どうやって解消すればいいの?

産後のママの多くが育児中に経験する「眠れない」「寝不足」の悩み。

ママ達は出産による身体へのダメージや疲労が回復する間もなく、24時間体制での育児が始まります。

慣れない育児と日常生活を両立する中で寝不足が続くと、「疲労は溜まっているのに眠れない」「育児に限界を感じてしまう」ママも少なくありません。

育児中の睡眠不足は心身共に悪影響を及ぼすことがあるため、放置するのは危険です。

ここでは、産後のママが眠れない原因や睡眠不足によるリスク、育児中の寝不足を乗りきるポイントなどについてお伝えしていきます。

産後・育児中のママが眠れない原因

出産直後に起こる「産後ハイ」

出産後は体力を大幅に消耗しているのにもかかわらず、なかなか寝付けないことがあります。

これは「産後ハイ」と呼ばれる状態です。最初は3時間おきに母乳をあげたり、慣れない育児も頑張らなきゃという気持ちが強いと、いわゆるハイテンションな状態になっているため、眠りにくくなります。

また、ホルモンバランスが変化することも影響していると考えられています。

産後ハイが続く期間は個人差もありますが、3ヶ月程度が一般的です。

この期間は疲れているのに眠れず、必要以上に動き回ってしまうことがあるため、ママ本人が気づかずに疲労を溜めてしまう場合があります。

会陰切開や帝王切開による傷の痛み

出産時の会陰切開や帝王切開により、産後は傷の痛みで眠れないこともあります。

くしゃみや咳などのちょっとした動作が傷に響くこともあるため、入院中思うように眠れないママもいるでしょう。

痛み止めなどで痛みを和らげながら回復を待ちますが、傷の治りを良くするためにも安静にして、しっかり休むことが大切です。

夜泣きや授乳など赤ちゃんのお世話

出産が終わると、すぐに赤ちゃんのお世話が始まります。

身体の疲れがとれないうちから、赤ちゃんのオムツ替えや授乳・抱っこなどに追われ、夜間も赤ちゃんのお世話でこまぎれ睡眠を余儀なくされるママが多いでしょう。

生まれて間もない赤ちゃんは昼夜の区別ができておらず、数時間ごとに授乳が必要です。

月齢が低いほど授乳回数も頻回になりがちなため、家事と育児を両立する中で、ママがまとまった睡眠時間を確保するのは必然的に難しくなります。

現代は核家族化が進み、ワンオペ育児をするママが多い傾向です。周囲の協力を思うように得られないことで、余計に睡眠不足になってしまうママが多いといえます。

育児への緊張や不安、ストレス

慣れない育児への緊張や不安・ストレスなども、産後のママが眠れなくなってしまう原因です。

赤ちゃんのお世話は、ちゃんと呼吸しているか、様子がおかしいところはないかなど、常に気が抜けません。

産後は赤ちゃんをしっかり育て、守ろうとする責任感から、常に心身が緊張した状態のママも多いでしょう。

育児の不安や眠れないことへの焦りが重なりストレスを溜めてしまうと、ホルモンバランスや自律神経が乱れ、睡眠に影響を及ぼす可能性があります。

 

睡眠不足によるママへの影響

具体的に、睡眠不足はママにどのような悪影響をもたらすのでしょうか。

頭痛

ママ世代に多い片頭痛の症状は、妊娠中に軽くなることが知られていますが、その多くは半年以内に再発するとされています。睡眠不足も再発の一因であり、つらい頭痛を抱えているママは思いのほか多いのです。また、慣れない育児でつい力が入りがちになるママにとって、肩こりは「職業病」でもあります。睡眠不足が続くと体をゆっくり休める時間が少なくなるため、肩こりがひどくなりやすく、緊張型頭痛を引き起こすこともあります。

自律神経の乱れ

睡眠不足は、自律神経バランスの乱れを引き起こします。ただでさえ、産後は女性ホルモンの急激な減少により自律神経バランスが崩れやすいものです。そこへ睡眠不足が重なると、深刻な自律神経失調症を発症することも少なくありません。そして、倦怠感や動悸、めまい、吐き気などさまざまな症状が現れます。

産後うつのリスク上昇

ママの10~15%にみられる産後うつは、産後3週目ごろから精神症状(気分の落ち込み、不安、イライラ感、無気力感など)や身体症状(吐き気、倦怠感、頭痛など)を引き起こす病気です。症状には個人差があり、数ヵ月間で改善することが多いとされていますが、なかには数年にわたって症状に苦しむママもいます。産後うつの発症メカニズムは詳しくは解明されていませんが、睡眠不足による疲労の蓄積も発症の一因になると考えられています。

 

産後の睡眠不足解消方法

朝起きたら、太陽の光を浴びる

朝に太陽を浴びることで、夜しっかり眠れるようになります。
睡眠の質を上げるには、朝日を浴びることがとても大切です。朝日を浴びると脳内の神経伝達物質であるセロトニンが分泌され、そのセロトニンが夕方から夜にかけて睡眠ホルモンのメラトニンに変化していきます。

私たちの身体にある体内時計は、夜に自然な眠りへと導きます。この体内時計は大体24時間の周期で動いていますが、厳密には1周期が24時間より少し長いため、ずっと暗い部屋にこもっていると毎日少しずつ後ろにズレてしまいます。けれども朝日を浴びることでこのズレがリセットされ、体内時計のリズムが整います。

また、体内時計はホルモン分泌の調節も行います。メラトニンは、朝日を浴びてから約14〜15時間後に分泌されるので、朝起きてしっかり太陽を浴びることでメラトニンの分泌を促すことができます。

たとえ晴れていなくても、曇りや雨の日でも効果が得られます。朝起きたら、カーテンを開けて太陽の光を浴びる習慣をつけてみてくださいね。

お昼に仮眠をとる

産後は、夜にまとまった睡眠をとることは難しいので、昼にパワー・ナップをとってみるといいでしょう。パワー・ナップとは、日本語で「積極的仮眠」といい、20分の仮眠をとること。短時間寝るだけで、疲労回復効果や頭が冴えるといった効果を得られます。

必ずしもベッドで寝るのではなく、机に突っ伏したり、椅子にもたれかかって座ったままでもOKです。また、電車や車の中でも構いません。子どもが昼寝をしている時間を、ママのパワー・ナップタイムにしてみてください。

 

深部体温を下げる食べ物を夜にとる

睡眠には体温も深くかかわっています。活動的になる日中、体温は上がりますが、夜にかけて徐々に内部の体温(深部温度)は下がっていきます。そうすることで、身体が休息モードに切り替わり、眠気が訪れやすくなります。

つまり、深部温度を下げることが良質な睡眠につながります。そのためには、冷やしトマトやきゅうりなど、深部温度を下げる食べ物をとるのがおすすめです。ただし、夜寝る直前に食べると胃や腸が活発になり、寝つきが悪くなるので、就寝2時間前までにとるようにしてください。

寝る90分前に、お風呂に入る

前述のとおり、入眠時に深部体温が下げることが良質な睡眠をとるポイント。そのためには、就寝90分前にお風呂に入るのも効果的です。私たちの身体は、お風呂から上がって90分後に深部体温が下がってくるので、睡眠時間から逆算して、そのタイミングで入浴するといいでしょう。

お湯が熱すぎると、交感神経が優位になって寝つきが悪くなるので、お湯の温度は40℃程度に。また、10~15分ほどの半身浴がおすすめです。もし時間がなくてお風呂に入れない場合は、足湯でも同様の効果が得られますよ。

監修:産婦人科医 宗田聡先生

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筑波大学卒業後、同大学へ産婦人科医師として勤務。その後、海外の大学への派遣や、周産期センター長を経て、現在は医療法人HiROO理事長・広尾レディース~恵比寿本院~の院長を務める。「誰にでもいいお産を味わってもらいたい」という思いで、妊婦さんや出産をはじめ女性医療と真摯に向き合っている。